〜オリーブの香り〜 No80『周辺機器の環境』

MxM

少し前にパソコン回線の環境設定を変えた。
速度がアップするという理由で、息子にせがまれて・・・
しかしそのおかげで、私は使い慣れていたパソコンの画面から、お気に入りの写真や資料が取り出せなくなってしまった。
仕事に支障はないけれど、提出しなければいけない文章を一から書きなおしたりと、面倒な作業が一週間続いた。

新しい一本の回線は、秘密の馴染んだものを葬ってしまった。

3年前、バプテスマを受けた時もこれと似たような状況だった。

日曜には、朝から遠出してアミューズメントな場所ではしゃいだり、日帰りの温泉に浸かって寛いだり、記録を写真に残せるようなことばかりのスケジュールを組み立てた
生活をしていた。

前夜に家族や友人と盛り上がるようなイベントに参加すれば、翌日は寝坊すると決め込
んで、真っ白なシーツとフワフワな毛布が温もりの拠点だった。

新しい一本の回線が繋がった時から、自分を囲んでいた周辺環境が劇的に変化していった。
古い回線はどこに繋がっていたんだろう?
情報は日々膨大な量で自分の視覚を直撃する。
その場所に立ってみようと思うと追いつかないほど、どこに行ったらいいのか、何を食べるといいのか、どうしたら幸せになれるのか?などなど、売り込みをかけてくる。

このセールストークを 家族が、友人が、職場の仲間が問いかけてくる。
皆、親切で温かく優しい言葉で・・・

一本の新しい回線は、まがい物を静かにはじく力をつけてくれた。
一本の新しい回線は、ホーローの鍋で煮込んだ料理がおいしいことを思い出させてくれる。
一本の新しい回線は、家じゅうの扉を開けて澱んだ空気をきれいにしてくれる。
一本の新しい回線は、GODSPEL・・・良き知らせを運んでくれた。

古き良き友人が「今度の日曜日、美術館に行かない?」と誘ってきた。
黙っていたら・・・「そうだった、ゴメン」と言い直した。

一本の新しい回線は、私が言葉にしないでいることも、静かに伝えてくれる力を授けてくれた 。

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