~オリーブの香り~ No 257『新緑の森の中で』

Shin1

 新緑の森の中に、その祝いの席は用意されていた。30年来の友人が人生の半ばを過ぎて人の妻となった。その人は、ある時には支援が必要な子どもやその家族に寄り添い、一つひとつの命を大切にしてきた人。気が付けば年齢を重ね、知らずしらず自分の心も体も随分と痛んでいた。

相手もまた老いを迎える齢の人。生みの母を含め3人の母を持つこの人は、継母が年若くして認知症を患ったため、長い間働きながら介護を担い、婚期を逸したとか。この継母は、実の子ども以上にこの人を愛してくれ、しかも聡明で美しい方だったようだ。それだけに、この人の心の中には様々なつらい葛藤と哀しみがあったに違いない。

それぞれに「人生の海の嵐にもまれ来し(新生讃美歌520番)」人たち。この二人がもっと若い時に出会ったとしても、こうはならなかったのに違いない。「優(しい)」という漢字を思い浮かべるがいい。「人」は「憂い」、苦しみと哀しみをたくさん持ってはじめて本当に人に優しくなれるのだと。神がその二人を透徹し、その心の内にある本当の「優しさ」に目を留めて結び合わせたとしたら、それは「神の業」以外のなにものでもありえない。

この二人を出会わせるために奔走した人々の中にも、最近家族や肉親を思いがけず失った人がいる。この二人は、そういう人たちの傍にも寄り添ったのだという。
そんな中でのパーティ、そこに集うすべての人が喜びにつつまれた。山の幸いっぱいのご馳走がふるまわれ、集まった友人たちの心からの祝福の言葉に、ふたりは輝く笑顔で応えた。一人ひとりの祝福の言葉が、「感謝の祈り」に聞こえたのは、私だけだろうか。

 人が新しく歩み直そうとしたときに、与えられた出会いを通して集められた人たちが、ひとつの食卓を囲んだ五月の夜。誰が言うのでもなく、神様の暖かい眼差しと祝福がその場を包んでいた。

「神のなさることは、すべて時にかなって美しい。」(新改訳「伝道の書」3:11)                                             

By おたね&父ちゃん

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