目いっぱい

Shin1

◆現代人の日々の生活で最もはっきりしている特徴は「忙しい」ことです。しなければならないこと、会わねばならない人、片付けねばならないこと、書かなければならない手紙(送らなければならないメール)、かけなければならない電話、守らなければならない約束で、毎日が目いっぱいに詰まっていることを、だれもが体験しています。

◆現代の生活は、詰め込みすぎて縫い目が今にも破れそうなスーツケースのようです。それでいて、「ものごとが、予定通りに運んでいない」といつも意識しています。

◆こんなに忙しいのに、いつまでたっても満ち足りないという執拗な感覚に始終つきまとわれています。ところが奇妙なことに、忙しくないことに人は耐えられないのです。「相変わらずお忙しいでしょう?」と言うときは、敬意を込めてそう言っているのです。そこでは「忙しいことは良いことだ」という、世間一般に通用している前提を再確認しているに過ぎないのです。

◆「忙しい人」と「偉い人」という言い方は、ほとんど同じ意味に思われているようです。かかってくる電話は少なからず「お忙しいところを恐れ入りますが、ちょっとお時間をいただけないでしょうか?』というお決まりの挨拶で始まりますが、これは「何一つすることがない人の一時間より、することが山ほどある人の割く一分間のほうが価値がある」と、暗にほのめかせているのです。そんな中で、今年もクリスマスを迎えようとしています。          
                         (続く)

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