〜オリーブの香り〜 No.28 『ピアノと再会』

ゆっこ

・今から40年前、私たち家族は夫の転勤のため、東京から大阪に移りました。
 10年経ってようやく大阪に馴染んだかなと思う頃、夫は神学校に行くと
 決心しました。

 夫の家族、親戚とは絶縁となりました。
 神学校に行くと言う事は、大学3年への学部編入試験を受け、入学が許可されなければ
 なりません。
 そして、少なくとも3年間夫は学生になると言う事、つまり収入は無くなると言う事
 です。
 夫は大学生、長女は中学生、長男小学5年生。
 夫には勉学のあいまにアルバイトをしてもらうとして、どうやって生活すればいいので
 しょうか?

・その時、私は売れる品を全部現金にしようと決断して、まず車を売りました。
 そしてピアノ。
 これは両親が結婚の時持たせてくれた、記念の品です。
 父に事情を説明すると、父はいとも簡単に
 『形あるものにこだわる必要はない、売ってかまわないよ』と。

・しかし、どこに行って売るのですか?
 いったい誰が買ってくれますか?
 そんな私を助けてくれたのが、大阪で出会った親友のJ子さん。
 「その記念のピアノ知らない人の所に行くより、私が持っててあげるワ」と言って
 買い取って下さったのです。

・先日30年ぶりに大阪に行き、J子さん宅に泊まりました、懐かしい家でした。
 その居間には、あの時引き取って下さったピアノが30年たった今も置いてあり
 ました。
 両親が買ってくれた茶色のピアノが。。。

・私もJ子さんもこのピアノのことに触れませんでした。
 そして、私は大阪を後にして帰宅しました。
 この思い出は私たち家族が大きく進路を変える時の出来事なのです。
 言葉に表せない、とても大切なことなのです。
 今私があることのために、どれだけ多くの方々の祈りと支えが、あったことでしょう。

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